白馬岳 二日目:9月1日(金)
5時起床、5:30朝食で、着替え等の荷物
を予定通り6時に出発する。
「やまきち」の奥さんに登山口の猿倉荘前
の駐車場まで送ってもらう(\500/一人)。

ハクサンシャジン

お客さんを送っているが、朝、白馬岳の
山頂が見れたのは、最近では珍しいとの
ことであった。
天気予報とは異なり、雲は多いが晴れて
おり白馬三山の山頂は見えている。



25分ほどで猿倉登山口に着き、準備体操
を入念に行う。
6:35登山開始、猿倉の登山口
(標高1245m)
を出発し、暫く舗装された平坦な林道を
進むこと40分で沢を越えると林道が終わり、
細い登山道に変わる。
登山道の両側にはツリガネニンジンに
似た形をしているが、下側の花弁が長く
舌を出したような「ミソガワソウ」が一面に
咲いている群生地を掻き分けるようにして
進むと黄色いオタカラコウが咲く、
白馬尻小屋、村営白馬尻荘に出る。
ここは大雪渓の始まりであり、小屋の主に、
先週日曜27日の落石事故の様子や大雪渓
の登り方の注意点などの話を聞く。

小屋から見えているのは第3号雪渓でその
下で、右の沢から落ちてきた直径1mの
落石があり、大雪渓見学ツアー20人の
メンバーが見学を終わり戻る時に、視界
30mの濃霧で不幸な事故にあったとの
ことであった。

先ず、上を見て登る、休憩は一回程度にし、
立ったまま上を向いていること、落石が
あった場合、瞬時に動けるようにアイゼンは
着ける事等であり、成るべく皆一緒に登った
ほうが良いとの指導を受けた。

自然に我々5名パーティーに単独行の若い
女性が一緒に登ることになった。
小屋から更に低木に道を20分程登り、ケルン
がある河原状の広場にでる。
ここでアイゼンをつけ、大雪渓に一歩入る。

雪渓の表面は波上に畝っており固く、凍り
締まっている。
所々に直径2mほどの石があり、30センチほど
の石は無数に雪渓の表面にあり、潜在的
には落石の予備軍である。
大雪渓を囲む右白馬岳側、左杓子岳側の
壁は急峻であり、行く筋もの沢が流れ込み、
そこを石が流れ落ちてくる。

常にカラカラと沢を落ちる石の音はしており、
慎重に注意を払いながら赤いベンガラの
目印に従って登る。
雪渓の登坂は冷風が流れ涼しく、気持ちが
良い。
何とか大雪渓を登り切るまではガスで視界
が悪くならないようにと祈りつつ、喘ぎながら
休まずに登り続ける。
7月に大雪渓上部で崩落があり、また
7月22日に小雪渓下で土砂崩れがあり、
大雪渓上部は途中で秋道を通る。
ここまで約1時間強で登りきって休憩とする。
ホット一息を入れ、登った大雪渓を眺めると
下からガスが吹き上げ、瞬く間に視界が
なくなり、早く登りきれたことに感謝する。
上部を見ると、白いヘルメットを被った
約10名が作業をしながら降りてくる。
白馬岳の環境整備のいたアルプス救助隊
の人達かもしれない。
この秋道には高山植物で埋め尽くされて
おり、名前の知っている花、知らない花も
沢山ある。
イワオウギ、ハクサンフウロ、
ハクサンシャジン、シマオウギ ヤマオウギ
等8種類近くの花が一面を覆い尽くしている。
秋道に入ると登山道は幅20から30センチ
ほどの狭い道幅となり、勾配も急になり、
雪渓は大きなクレパスが口を開け、また
雪渓の80センチの厚みの下には50~70
センチの空洞があるのが見える。
左側の杓子岳尾根の上部は岩山となって
いるが、今にも崩落しそうな不安定な景観
が恐ろしさを増幅させている
九十九折れにいくつか折り返しながら急登り
も一面のトリカブトの群生が続き、
ところどころクルマユリの花が2輪、3輪と
咲き、
薄紫のタカネナデシコが雪渓を渡る風に
そよいでいる。
雪渓から外れ、風がなく、急登りに額から
汗が滴り落ちる。
しかし、代わる代わる現れる高山植物に
元気を貰い、高度を稼ぐ。
非難小屋に着き、ここで昼食休憩にする。
「民宿やまきち」で作ってもらったお弁当だ。
おおきなオムスビ二つに、半熟卵、焼き鮭、
ウインナー、漬物等で旨い。
30分ほどユックリ休憩し、行動を共にして
いる単独行の女性は我々の2倍はありそうな
ザックをいとも軽々と足取りも軽く、我々より
相当に体力、気力がありそうである。
聞いたところ、百名山は残すとところ10幾つ
とのことで、全て単独で登ったという。
今日もテント張りとのこと。恐れいりました。
非難小屋からは傾斜も少々緩やかになり
お花畑と言われ、高山植物群生地となる。
更に1時間ほど登ると、標高2500mを
超えると雲の上に出て、上空は青空が
広がり上部に村営の白馬岳宿舎が見えて
きた。
既にスタートから5時間強の直登で、足は
鉛をぶら下げたように重く、また、空気が
薄くなり、喘ぎながらの登りが続き、30分
ごとの小休止が20分間隔と狭まる。
しかし、もう本日の目的地「白馬山荘」まで
後わずかである。
ここまで一緒に登ってきた単独行女史は手前の村営白馬宿舎でテントを張るとのことで、
お互いの今後の無事を祈って分かれた。

我々は更に先の白馬山荘を目指すと、目の前に抜けるような青空に天を突いている白馬山頂を
守るかの如く、周囲を城壁の様に囲んだ白馬山荘が建っていた。
最後の力を振り絞って重い足を引きずり上げながら登り、午後1時ちょうどに、山荘受付に辿り着いた
(標高約2850m)。
猿倉の登山口を6時半に出発し、標高差
1600mを6時間半で踏破したことになり、
ほぼガイドブックの標準時間で登ったこと
になり、平均年齢6X才パーティーのパワー
も、なかなかのものである。
重いザックを背中から降ろし、もう歩かなくて
良い開放感から全員の顔に安堵が満ち
溢れている。
チェックインを終え、荷物を部屋に運び、先ずは大雪渓を無事に超え山頂直下までこれたこと、
天気に恵まれ数えきれない高山植物に出会えたこと、疲れきった体の緊張を解いてやること、
乾ききった喉を潤してやること、など等の理由を付けて食堂とは別にあるレストラン
「パレスプラザ」(ホテル並みの作り)に直行し生ビールのジョッキを傾けて「乾杯!」。
グビ、グビ、グビと一気に喉に流し込みホット一息。この至福の時間がこたえられない。
杓子岳、鑓が岳を眺めながら今日一日を振り返り瞬く間にビールを空け、ウイスキーに代わり
ユッタリと開放感に浸る。アルコールの駄目な鵜飼さんは1時間ほど休息したあと、頂上に行って
来ると出かける。
残ったノンベーは明日頂上へ行くのだから、今日はイイヤと、更に飲み続ける。
15:30まだ陽は高く、夕食の17:30までには
時間が余り、我々も山頂に登ってこようと、
再び登山靴を履く。
原田さんは近くを散策するとのことで、
竹内さん、吉松さんと熊本の酔いどれ3人組み、
は夕日を背中に山頂に向かう。
標高差100mを登ることになる。

3000m近い高度で空気は薄く、お酒と高山病
(?)で心臓がバクバクするらしく、竹内さん
は30歩登っては一息、20歩登っては深呼吸
と辛そうである。
途中鵜飼さんの下山と会い何とか山頂に
辿り着いた。
2932mは、春の燕岳の2680mを超え
今年の最高点に達した。
雲の上に出て青空の広がりと、ガスは雲の
流れで下に見える山並みの変化はいつまで
見ていても飽きることはない。
山頂から腹ばいになって切り立った崖を覗き
こむと、吸い込まれそうになり、思わず身震い
する。
暫く、360度の展望を眺めてから下り、山小屋に戻る。
食前酒をシタタカ飲んだため夕食はアルコール抜きにする。
(吉松さんは飲みたそうだったが)
6時半には布団に潜り込み就寝。11時ころから1時間ごとに目が覚めるが疲れからか直ぐにまた眠りに入る。
1時頃、外に出て見ると、満天の星空が輝き明日の好天を確信し再び眠りにつく。
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