07年7月20日21日 鳳凰三山
二日目(7月21日)
4時起床、昨夜の雨が降り続いており
小雨(霧雨)がパラついている。
予定通り4時半に全員雨具を着け揃って
小屋の前で写真を撮り出発する。

外は既に明るくなっておりヘッドランプの
必要もなく登山道はシッカリ認識できる。
雨も大したことはなく、殆ど雨具は必要と
しない程度になった。
しかし濃いガスが一面を覆い見通しは悪い。
花崗岩が崩れた砂地の急登を一気に登り
シラビソ樹林帯を抜け出ると花崗岩の
大きな岩が出始め、花崗岩の風化した
奇岩、奇峰の間を縫って緩やかな砂地
を暫く歩くと大きな花崗岩の重なりあった
砂払岳に出る(2600m)。

ガスで全く遠望は利かない。
岩陰には7花弁のピンクに
縁取られた白い花のツマトリソウ
ミヤマシャクナゲ、コイワカガミ、
コケモモ、等が咲いている。
一旦下り鞍部の薬師岳小屋について
休憩を取る(6:00)
小屋の周囲にはハクサンシャクナゲ
マイヅルソウタカネスミレミヤマゼンゴ
が密集して咲いていた。
小屋からの砂地急登を20分で
薬師岳山頂に着く(2780m:6:30)。
既に雨雲の上に出て、上空には薄日が
時々こぼれてくるが、白根三山は白雲に
覆われて見ることが出来ない。
奇岩、奇峰の砂地にハイ松が茂った稜線
登山道の急登を更に観音岳に向かって、
空気は薄くなり、ゼイゼイ言いながら、
汗を滝の様に滴らせながら一歩一歩進む。
約1時間掛かりヤット鳳凰三山の最高峰 
観音岳山頂に着く(2840m:7:20)。
最高点の岩によじ登ると、白い雲の間に北岳、
間の岳、農鳥岳の白根三山が見え出した。
ただ雲が多く全容を中々見せない。
また雲の流れが速く、直ぐに姿を消す。
シャッターチャンスが難しい。
鵜飼さんが調子悪そうで青い顔をして
吐き気がすると言う。
恐らく高山病に掛かってしまったようだ。
富士登山で山頂での鵜飼さんの様子に
似ている。

鵜飼さんに「救心」を飲んでもらい休んで
いるうちに、他の三人は朝食の弁当を取る。
30分近く休憩をタップリ取り、鵜飼さんの
調子も落ち着いたようで、ユックリ歩き始める。
観音岳から潅木帯の急坂を15分ほど下る
と再び砂地に出て、振り返ると観音岳の
山頂はガスの中に入ってしまった。

上空には青空が広がり始め、雨の心配は
全くない。
正面にはアカヌケ沢の頭への急登が朝日
を浴びて輝いている。

その右手にガスで見えなかったオベリスク
の奇峰が姿を現した。
アカヌケ沢の頭への急登に取り付く。
鵜飼さんの調子はまだ完全ではない、
しかしユックリ休まずに喘ぎながら歩を
進める。
目の前直ぐ近くに見えているのに中々
手が届かない。
砂地や岩陰には多くの可憐な花が咲き、
岩礫に咲くピンクの花、赤く小さな丸い花、
薄紫色のタカネビランジタカネグンナイフウロ
白い花のボタンヅルモミジカラマツ
黄色のイワオウギ、ピンクのヨツバシオガマ等、
正に高山植物の宝庫である。
アカヌケ沢の頭の真下に来て山頂を仰ぎ
見ると、北アルプスの燕岳の同じ花崗岩の
奇岩を思い出す。
更に登ると珍しく紺色のミヤマハンショウヅル
一輪静かに咲いていた。
更にゴゼンタチバナとツマトリソウの群生が
あり高山植物が急登の疲れを癒してくれる。

ミヤマダイコンソウ

ツマトリソウ

ミヤマシャクナゲ

コイワカガミ

コケモモ

アズマシャクナゲ

ハクサンシャクナゲ

マイヅルソウ

タカネスミレ

ミヤマゼンゴ

ハイマツ

ハクサンイチゲ

タカネビランジ

クロマメノキ

タカネグンナイフウロ

モミジカラマツ

イワオウギ

ヨツバシオガマ

ミヤマハンショウヅル

雲の合間から眺める白根三山は時間が
経つにつれて姿を出し始め、北岳の
大樺沢の雪渓を見え始めた。
オベリスクもグングン大きさを増してきた。

オベリスク

オベリスク

やがて前方に標識が見えアカヌケ沢の頭
に着いた(2750m:9:00)。
この地点で白根三山が見えるのは最後の
地点であり、暫く全容が現れるのを待ったが
残念ながら見ることは出来なかった。
写真に収め、反対側のオベリスク(地蔵岳)
をバックに記念写真を撮り賽の河原に降りる。

お地蔵さん群

オベリスク(地蔵岳:2764m)直ぐ下の賽の
河原には昔,信仰登山者が担ぎ上げた
石の地蔵さんが数十体置かれている。
深田久弥氏著の「日本百名山」によれば、
「地蔵岳の絶頂に、二個の巨石が相抱く
ように突っ立ている。
古人はこれを大日如来に擬して尊崇した
ところから法皇山の名が生じたと言われて
いる。
その後徳川時代の中期から地蔵仏の信仰
が盛んになって、この巨石も形が似ている
ので地蔵仏と呼ばれるようになった。」
とあり、鳳凰山や地蔵岳の名前の由来を
発したものであろう。

オベリスクを背景に記念写真を撮り、我々
は鳳凰小屋に向かって下りに入る。
富士の須走りの様に、急な白砂の斜面
を快適に滑りながら降りる。

ハクサンボウフウ

ミヤマバイケイソウ

カイタカラコウ

やがてダケカンバの林間に入り高度を
ドンドン下げていくと再び雨雲の中に入り
濃いガスに包まれる。
本によればオトギリソウやタカネビランジの
花畑があるそうだが気がつかなかった。
約1時間の急な下りを降りきり鳳凰小屋に
着いた(2382m:10:10)。
小雨がパラツイテいる。
鳳凰小屋の前には絶滅仕掛かっている
珍しい「キバナアツモリソウ」が咲き、
コオニユリやイワカガミ等が咲いている。
暫く休憩し、若いアルバイト(7月から1月)
の女性と会話しこれからの標高差1400m
の下りに備えて休養を取る。
鳳凰小屋はドンドコ沢から青木鉱泉に
出るルートと燕頭山経由、御座石鉱泉
ルートの分岐点にある。
我々は青木鉱泉へ下る道を見送り、
御座石鉱泉へのコースを取る。

キバナアツモリソウ

オニシモツケ

ムカゴトラノオ

コオニユリ

イワウチワ


緩やかな傾斜から急なザレ場の下りの
連続となり登山道は危険な場所はないが、
一歩外側にズレルと、大きく崩れた断崖
絶壁となっており覗き見るのも怖い場所
が数箇所あり、確実に登山道を確保し
ながら慎重に下る。
100%近い湿度で風がなく下りとは言え
大汗の雫が滝になって流れ落ちる。
樹林帯、ザレ場の繰り返しで高度を下げる。

オサバグサ

ヤマハハコ

燕頭山の手前で地下足袋の男性と
登山靴の若い女性が、倒木で塞いだ
登山道の整備をしており山小屋の主らしい。
登山者にとっては有難いことだ。

一緒に来たと思われる白い犬が我々の下り
についてきてしまった。




やっと燕頭山(2015m:11:40)ここで昼食
にする。
鵜飼さんにとっては朝食である。

ついてきた白い犬に、エサがほしいのかと
思ってパンの切れ端をやったが食べない。
どうやらノラ犬でもないらしい。
20分休憩食事し、再び下りに入る。
まだ2000mを切っていない。
御座石鉱泉は標高1070mであり、既に
800m下ったが、後丁度1000m下らなければ
ならない。
急な下りが延々と続く。

白い犬はあいかわらずついてくる。
しかし途中で我々を追い越したグループが
あり、今度はそちらについて先に行って
しまった。
レンゲショウマがまだつぼみの西の平から
御座石鉱泉まで3時間、1000mの下りで
膝はガクガクになり15:00やっと御座石鉱泉
に到着した。

すると、なんと我々についてきた謎の白い
犬がいるではないか。
結局、御座石鉱泉の誘導犬?だったようだ。
犬もさすがに疲れたか、ダンボールの中で
寝そべっていた。

ギンリョウソウ

ヤブレガサ?

ヤマアジサイ

レンゲショウマ

朝4時半に出発し休憩込みではあるが
10時間半の行程であった。
良く歩いたものである。
早速、温泉に浸かり、二日間の汗と疲れを
洗い流し、新しい下着に着替えサッパリした。
サッパリしたところで飲むビールはこたえ
られない。カラカラの喉に滲みる。
宿の車で送ってもらう(穴山駅まで\5000-)。
走り始めて急ブレーキして運転の主人が
飛び出していった。
何事かと思ったら車の前に40センチほどの
マムシがいた。
木の枝を切って首を押さえて捕まえた。
まだマムシの子供とのことで逃がして再び
走り始めて2分、また道路の真ん中に今度
は胴体直径4センチもありそうな大きなやつだ。
手馴れたもので、つかまえたが結局入れ物
がなく、また逃がすことにした。
マムシの焼酎付けは2万円で売れるそうで、
主人は良く取るそうだ。

再び走り初めて更に2分またまたいた。
今度もデカイやつだ。
もう主人は我慢できない。捕まえた獲物の
入れ物(2リッターペットボトル)を取りに宿まで
後戻りした。商売、商売か・・・
10分ほどの間に3匹のマムシに遭遇する
など恐ろしい。鳳凰三山はマムシの宝庫か
と思いゾッとした。
せっかく準備万端整えたが、今度は駅まで
約50分、もう一匹も出現することはなかった。
穴山駅17:37の普通上りで甲府まで行き、
鵜飼さんは疲れたとの事で、真っ直ぐ次の
スーパーあずさ30号で帰宅。
雄さん、竹内さんと熊本は甲府で食事。
KIOSKのおばさんに美味しい店を紹介して
もらう。
駅前大通りにある「甲州ほうとう 小作
である。
今日は豪勢に行こうと、ワインビーフの
たたき、あわびの醤油煮、地鶏のパリパリ
サラダ、そしてメインディッシュはカボチャ
ほうとう、それに麦100%の地焼酎をボトルで。
期待に違わず、どれも料理は旨かった。
ホウトウは今まで旨くないと先入観があった
が、ここのホウトウは旨かった。
一人\3000-は安く皆大満足で鳳凰三山を
締めくくった。
甲府発19:45のスーパーあずさで、3人一緒に座われ、残りの焼酎を飲みながら帰路に着きました。

念願の鳳凰三山は大した雨にも合うこともなく、久し振りの長時間歩行ではありましたが、
遠望の景観に代えて、高山植物三昧を堪能した二日間でした。

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観音岳

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