雪嶽山 第二部「喜雲閣山荘から恐竜稜線(11時間)」
雪嶽山の続き第2部の報告です。
前日後半は雨に祟られ「伽耶洞渓谷」を悪戦苦闘の末、やっと喜雲閣山荘(ヒウンカク)に到着し、
明け方まで雨が降り、山小屋は、雨は漏らないのだが、天井や壁の表面に水滴が溜まり、
その雫が顔に掛かる。また日本の山小屋と異なり乾燥室はなく、昨日グッショリ濡れた登山靴、
雨具、帽子等はそのままで、ズッシリと重くなっている。
朝4時45分起床。まだ暗い内に外のベンチで韓国チームはヘッドランプを付けて、朝食の準備に
取り掛かる。雨は上がっており、今日の天候は良さそうである。
日本チームは昨日の怪我と疲労回復の具合で、本日(10月2日)のコースの選択をどうするか
作戦会議を行なう。
1)最高峰の「大青峰」を目指す(登り2時間の急石段の連続で往復し下山)
2)「恐竜稜線」コース(1200mから標高差200m程の登り下りのピークを4つ超える早足で9時間)
最高の景観がある魅力的なルート
3)最も軽い「千仙洞渓谷」を下山する4時間コース
鵜飼さんは、昨日痛めた膝の具合があまり良くなく、3)の「千仙洞渓谷」を希望、高橋さん、熊本は
1)の比較的楽に思われた最高峰登頂を希望したが、韓国チーム全員から、景観の素晴らしさと
登りの辛さから、2)の方を推薦されそれに従うことにした。
従って、本日は「二チームに別れての行動となった。
「千仙洞渓谷」コースは鵜飼さんに、朴さん、李さんがサポート。
「恐竜稜線」コースは高橋さん、熊本に、南さんをコースガイドに全さん、鄭さん、田さんの6名である。
「千仙洞渓谷」コースについては、次回雪嶽山報告第三部で鵜飼さんの執筆でお届けする。
今回の第二部は「恐竜稜線」コースについて報告する。
朝食を済ませ、朝6時、「千仙洞渓谷」コース
チームに見送られて、喜雲閣山荘を
「恐竜稜線」チーム6名が出発する。
チームリーダーの南さんは昨日2時まで、
李さんと焼酎を飲んでいたと言う。
朝は別人の登山家南さんがいる。
相当な重量のザックを担ぎ、軽々と早い
スピードである。
まだ、日の出前の薄暗い潅木の登山道を、
南さんを先頭に登り始めると、見る間に空は
雲が切れ、一面に青空が広がる。
我々日本チームのペースに合わせ、南さんは
ユックリペースで先導してくれるため、後ろ
から来る登山客に次から次へと先を譲る。
1000mを超えた尾根は紅葉がピークで美しい。
30分ほど登ると、雪嶽山のピーク大青峰が
中青峰、小青峰を従えて姿を現し、東側の
尾根は雲海を裾に巻き、岩峰が抜き出ている。
日の出の朝陽を浴びた岩が光輝く。
今まで日本で登った山を思い浮かべるが、
中々、この景観に近い経験がない。
しいて言えば、瑞墻山と妙義山を合わせ、
そのスケールを大きくした感じである。
終始、右に小青峰、中青峰、大青峰の尾根
を眺めながら、高度を稼ぎ、第一のピークに
取り掛かる。
後ろから朝陽をまともに受けて、汗がほとばしる。
急な岩壁の間を一気に下る。
二つ目のピークにチャレンジする頃には
完全に、明るくなり、雲ひとつ無い青空に、
岩峰郡が360度の広がりで、我々の周囲を
取り巻く。思わずその景観にカメラを構える。


第二のピーク登りの前に鞍部で一回目の
休息をいれる(7時)。
第二のピークは急峻な岩壁に取り付く、鎖場
(韓国ではロープ)、南さんは相当な重量の
ザックを背にしているが、軽々と登って行き、
後続の我々が後に従う。
後ろからの日差しが暑く、空は雲ひとつ無く
澄み切っており、急峻な岩峰の峰々が連なり、
視界一面に雪嶽山の尾根が広がりを見せる。
疲れも吹き飛び、次の尾根超えに意欲が
沸いてくる。
下りも急な切り立った岩壁に挟まれた狭い
岩登山道を慎重に下る。鞍部には紅葉が今を
盛りと燃えておりその中を、次の第三のピーク
へ向う花道になっている。
再び鎖場だ。
大きな高さ約25m岩盤を乗り越え
なければならない。足がかりは2センチ〜3センチ
の岩の窪みに慎重に登山靴の先端を置き、
両手で全身を持ち上げ、次の足がかりを探し
ながら登っていき、上端のフラットなピークに
立つと、安堵感と下から吹き上げる冷たい風が
気持ちよい。
既に、スタートしてから3時間を経過した。
このルートは脚力と同時に、岩壁や鎖場が多く、
腕力とバランス姿勢のとり方も必要である。
男性ならまだしも、軽々と韓国の若い女性に次々
と抜かれ、我々の体力の無さを思い知らされる。
韓国パワーの凄さに圧倒される。
兎に角、韓国人の食事の食べる量は我々の
3倍はあり、そして良く飲む。この辺に源泉が
潜んでいそうである。
ここで、既にピークを三つ超えたはずで、
残すところ、後一つ越えれば良いはずである。
因みに、南さんに聞いてみた。何と残りのピーク
は二つ越える必要がるとのこと。
「オイオイ!冗談はやめてよ!」と心で思い
ながらも、日本人の面子もあり、軽く余裕ある
態度で「アア、そうですか!」と返事する。
フクラハギやモモが吊らない様に、休憩毎に
バンテリンを塗り、予防措置を講じる。




三つ目のピークを越えると尾根筋から
東海(日本海)と町並みが見える。
それに繋がる針の岩峰を無数にまとった
尾根は千仏峰と南さんが教えてくれた。
反対側には全く樹木の生える余地のない
Rock Mountainが姿を見せる。
まさに、ロッククライミングの宝庫みたいな
山である。
何とか、200mのピークを全て超え、鞍部の
広い場所(マドゥリョン)に到着した
(1240m 11:40)。
既に本日朝6時に出発して、約6時間弱を
経過している。
結局ピーク超えは四つではなく、六つで
あった。南さん曰く、「最初から六つと言うと、
登る意欲を削ぐ、従って少なめに言ってあった」
ですと。騙されました。
しかし、十二分に騙され甲斐のある
景観と楽しさを味あわせてくれました。
「南さん有難う」
この鞍部では数十人の登山客が昼食と休憩で賑わっている。ここからは、もう登りはなく下り一方の下山
コースに入ると南さんは言う。我々もここで昼食にする。いつもと同じ韓国チームが昼食の準備にはいる。
大きな二つのコッフェルで湯を沸かす。その間、恒例の焼酎パーティーである。
全員持ってきた焼酎を全部出し、次から次へと空にしていく。
日本から持ち込んだツマミも全て放出して周囲の登山客とも会話しながら、楽しい雰囲気が漂う。
我々二人が日本から来たと分かると、知っている日本語で話しかけてくれる。「こんにちは」、ツマミを
お裾分けすると、日本語で「ありがとう」と返ってくる。高橋さん、熊本は申し訳程度に焼酎をごく微量なめる
程度で、南さん、全さんはガンガン喉に流し込む、返杯、乾杯の連続である。あきれるほど強い。
湯が沸き、今日の昼食は、最初に日本から持ち込んだインスタント雑炊を食べてもらう。美味しいと言って
食べてくれる。次は激辛ラーメンである。これが、またまた美味い。これが山での食事の最後とあって、飲むは、
食べるは、全てにパワフルである。我々はとても太刀打ちできない。ユックリと2時間たっぷり飲み食いに費やした。
二日間の食材を殆ど食べつくした後の南さんのザックを持ってみろと、鄭さんが言う。何と、30Kgを優に超える
重さで40kg位ありそうだ。今まで、軽々とヒョイヒョイと急な登り、鎖場などバランスよく、早いスピードで来たのに、
またまたビックリ、体の大きさは我々とほぼ同じでむしろ、細身である。
しかも大量の焼酎を飲みながらである。超人的体力とパワーの持ち主に唖然となる。
これからは、自然石を積重ねた急な石段を
一気に1000mを3時間で下る。
下りも登り以上に注意が必要である。
下りも韓国人は早い。日本の山では、
下りの速さに自身を持っていた私も、負ける。
鼻歌の女性登山客にスイスイ抜かれてしまう。
そのタフさ加減に舌を巻く。
残り1時間、急な石段を何とか無事下山し、
茶店に着く(17:00)。喉はカラカラになり、
茶店で、冷たい缶ビールを喉に流しこむ。
やっと生き返った。何と美味いことか。
田さんと鄭さんはこの後、車の運転があり、
この美味いビールが飲めない。
「田さん、鄭さん、ごめんなさい!」


休憩の後、鵜飼さん、李さんが待っている
駐車場まで、40分ほど歩かねばならない。
下りても、下りても、急な石段は続き、
足はガクガクである。
二時間ほど下ったところで、若い女性が一人、
痛々しげに足を引きずり下っており、膝間接
を痛めたらしい。
早速、南さんが話しかけている。どうも登山ツアー
で来た女性らしい。
南さんは、彼女をサポートしながら自分の
30Kg強のザックを背に、彼女のザックを前に
担ぎ、下り始めた。
登山協会の顧問としての責任感からであろう。
後から、追いついた全さんが、今度は彼女の
膝に自分のサポーターを巻いてあげ、皆で
サポートしてあげている。
しかし、彼女のツアーコンダクターの姿は
見えない。彼女は怪我した体で、一人で
下りている。後1時間は急な石段を下りる
必要がある。一体どうなってるんだ!
駐車場では。(朴さんは明日、結婚式があるとの事で、先に帰った)
丁度17:00鵜飼さん達が待つ駐車場に到着した。朝6時に喜雲閣山荘を出発して11時間が
経過している。昨日12時間と合わせ、二日で23時間の山登りをしたことになる。
こんな長時間は今まで経験が全くなかった。

後は本日の宿舎で新鮮な刺身(チョウザメ)による最後の晩餐が待っている。

次回第三部では鵜飼さんの「千仙洞渓谷」コースと帰宅までの報告を合わせて
行ないます。少々お待ち下さい。
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