【熊本が読んだ山の本】

 

 

 

 

 

 

タイトル
著者
出版
読後感
日本百名山
深田久弥
 
隠れた不朽のベストセラーで、山登りを目指す者は一度は目を通している。深田久弥は百名山を選ぶ条件に@山の品格A山の歴史B山の個性を重んじ、必ずしも徹底はしていないが、1500m以上の高度を持つ山を付帯条件としている。【百名山を登山する場合は、事前に読んでおくと(数ページ/一山)、山の品格、歴史、個性などを知ることにより、一味違った感慨深いものとなろう】
ニッポン百名山よじ登り
クレイグ・マクラクラン
小学館文庫
日本百名山をニュージーランドから来た、二人の大男登山家が78日間で踏破した話。恐るべき健脚の持ち主で、ガイドブックの歩行時間は半分以下の時間でこなしてしまう。それでいて、景色もそれなりに堪能しているようで、痛快活劇登山か?
郷愁の八ケ岳
新田次郎
小学館
山のエッセイ集で15作がある。電車の通勤などの短時間を有効に利用できる
八甲田山死の彷徨
新田次郎
小学館
 
縦走路
新田次郎
新潮文庫
美人の女流登山家二人をめぐり、冬山(八ヶ岳・北岳)を舞台に、新田作品では珍しく恋愛感情を交えた200ページほどの小作品である。
山の旅(明治・大正編)
近藤 信行編
岩波文庫
芥川龍之介の「槍ヶ岳に登った記」があり、あの芥川龍之介が槍に登っていたとは思いもよりませんでした。更に、夏目漱石の阿蘇登山、志賀直哉の赤城山、正岡子規、幸田露伴等の登山というより、丘歩きの旅日記的なものまで載っています。
山の旅(大正・昭和編)
近藤 信行編
岩波文庫
最初の「槙 有恒」のアイガー東山稜初登はん、は感動ものです。
文豪では中里介山の大菩薩登山や斉藤茂吉の遍路、寺田虎彦の雨の上高地井伏鱒二の七面山所見、小林秀雄のカヤの平等があり勿論、深田久弥、今西錦司、村井栄子、平野長蔵(尾瀬)などの登山に関係ある人の山に関係した話があります。
山名の不思議(私の日本山名探検)
谷 有二
平凡社
現在の上高地の漢字が使用されたのは江戸時代後期 文政年間から松本藩の公文書が一斉に使い始めた(当て字?)、それ以前は1661年頃からの松本藩の公文書や信府統記等で上河内が使用されていた。但し、当時でも地元では上口(カミウチカミグチ等)や穂高奥宮が鎮座していることから、当時の神社関係者は神降地と書いていたようである。
登山不適格者
岩崎元郎
生活人文庫(NHK出版社)
初心者向けの登山指導書か
みなみらんぼうの山からこんにちは
みなみらんぼう
毎日新聞社
サンデー毎日に連載された紀行文で'97年〜'99年の二年間分をまとめたもので、約100回分が収められている。3/4は登ったことがある山で、懐かしく、同じ山を登っての感じ方が違っていたり、同じであったりし楽しい。みなみらんぼうが山の木や花にくわしいのに驚く。毎週登山かハイキングをしており、その内どこかで会うかもしれない。
コバンザメ登山家 フン戦記
安藤洋子
白山書房
1947年生まれ、東京に育ち、結婚して夫の故郷長野上田市で造園業を営む主婦。親分ザメ(夫)に付いて10年前(93年)から登り始め、登山に熱中していく素人。33座の紀行文(「山の本」に投稿したものが多い)である。気力、体力、技術がすごい、圧倒されそう。内容、文章共も面白く一気に読んでしまった。北穂〜奥穂、槍〜北穂、西穂〜奥穂等を縦走して、怖さを感じない恐ろしい主婦。
人はなぜ山へ   
山の本編集部
白山書房
季刊誌「山の本」の掲載された43編の紀行文(93年〜02年)を収録。第一章:憧れの山第二章:私が山にのぼる理由第三章:人との出会い第四章:山でのハプニング【一章、二章はそれなりに楽しめたが、・・・・・・・・・・】
女たちの山小屋物語
鷹沢のり子
山と渓谷社
山に生きる10人の山小屋のかあちゃん達のたくましい人生が語られている。尾瀬 温泉小屋、唐松岳山頂山荘、立山大日小屋、剱岳仙人池ヒュッテ、金峰山麓有井館、奥秩父十文字小屋、後立山船窪小屋、北八つしらびそ小屋、丹沢尊仏山荘、蝶が岳ヒュッテ。山小屋創設時の苦労、登山道の開拓、そして戦争や遭難で夫を失い女手一つで山小屋の運営等、何げなく今まで山小屋に宿泊していたが、山小屋の歴史を読んで、次に山小屋に泊ま時には別の楽しみが出てきた。【宿泊した或いは休憩した山小屋等があり、面白く一気に読んでしまった。山小屋かあちゃんの山への思い入れと登山客に如何に楽しく山に登ってもらうかが切々と伝わってくる】
槍ヶ岳開山
新田次郎
文春文庫
播隆上人が1828年槍ヶ岳を初登頂し仏像を安置する半生を書いたもの。冒頭の序章が槍の肩から槍穂先に登る迫真ある15ページでスタートする。播隆上人は富山の農村の生まれで14歳で立山に登り、富山の一向一揆で国を追われ、岐阜に逃れ、そこで出家し寺を持たぬ修行僧(念仏僧)として修行を積む。槍ヶ岳の前に、その美しさに魅せられ「笠が岳」を再興する。この本を読むとき手元に北アルプスの地図を手元におきながら読むと楽しい。播隆上人が槍ヶ岳を開山したルートは木曾路から松本に入り、現在の大糸線一日市場(ひといちば:松本駅から5駅目)から小倉村を抜け、鍋冠山(2194m)大滝(2618m)そして蝶ケ岳(2677m:ここで初めてコマクサを見る)を越え、横尾に下り、梓川に沿い、槍沢を登って肩行く直登ルートであった。【槍ヶ岳を既に登った人、これから登る人にとっても面白い。単なる小説としても、随所に起伏のある筋立てになっていて一気に読んでしまった。一級のお勧め本】
忘れえぬ山 T
串田孫一(編)
ちくま文庫
猪谷六合雄、桑原武夫、黒田初子、深田久弥、槙有恒等の紀行文が18編載っている。【それなりに楽しめるが】
剱岳〈点の記〉 
新田次郎
文春文庫
副題の〈点の記〉の点は三角点のことである。陸軍省参謀本部陸地測量部の柴崎による剱岳登頂物語である。陸地測量部は公式な地図作成部署であり、柴崎はその三角点測量にあたっていた。唯一峻険な剱岳付近の地図が欠落しており、柴崎が命を受け、剱岳登頂に三角点の設置であり、更に、当時発足したばかりの山岳会より先に初登頂を果たす命題を与えられる。【三角点測量には大きな機材をを大量に運び込まねばならいが、軍人でなく、文官としての柴崎の並々ならぬ苦労が展開し、楽しい、そして登頂するが、果たして三等三角点が設置出来たのか、初登頂であったのかは読んでのお楽しみ。お勧めの本である】
富士山頂
新田次郎
文春文庫
富士山頂に気象レーダー設置する、予算獲得から実際に2年間に及んだ気象観測所設立まで、実際に責任者として指揮をとった小説である。新田次郎が気象庁で最後の大仕事で、以後退職し作家活動に入った。【読み応えがあり、お勧めの一冊】
強力伝・孤島
新田次郎
文春文庫
強力伝・孤島その他全6編の短編集である。今回は再読であるが、何度読んでも面白い。@強力伝(50ページ)富士山の強力(小宮山正)を実在のモデルとして、白馬岳の山頂に風景指示盤(360度の山名を表示)の花崗岩の支柱、500Kgを2個麓から大雪渓を登り山頂まで担ぎ上げる話A八甲田山(22ページ)B凍傷(74ページ)明治末期に気象台の一技師が富士山に観測所の設置を願い、自費で冬季の富士山頂での観測実績をあげ、観測所設置にこぎ付ける。技師と強力のC孤島、八丈島の更に南方140Kmにある孤島「鳥島」における気象観測所生活の話【強力伝は新田次郎の処女作で直木賞受賞した力作、読み応えある、お勧めの一冊】
みんな山が大好きだっ
山際淳司 
中公文庫
氷壁に命を掛けたソロクラ イマー(単独行登山家)加藤保男、森田勝、長谷川恒夫等のアルピニストの壮絶な生き様。半澤さんが紹介している、加藤文太郎も13ページに亘り登場する。【彼らの命を山に掛ける執念は、我々の山登りとは異質である】
ダンプ、山を行く
高橋和之
中公文庫
今井道子のダンナ、潟Jモシカスポーツのオーナー。 ヒマラヤや欧州アルプスの多くの登頂を果たしているが、ユニークなのは、ヒマラヤのチュー・オー(8201m)の山頂からパラグライダーで飛びたちベースキャンプ(5200m)3000mに降り立つ。高所飛行の世界記録を樹立。パラググライダーの指導員として吉永小百合や時任三郎等の先生である。これらの話。【マア、そこそこに面白かった】
山は私の学校だった
今井道子
中公文庫
高橋和之の妻、あだ名は「シャモ」(口も手足も出し喧嘩早い)。医学博士。ヨーロッパの三大北壁を女性で世界初の登頂。自分が主催する山岳クラブ(クラブ・ベルソー)等の海外登山遠征にまつわる話。   【?】
神々の山嶺(上・下巻)
夢枕獏  
集英社文庫
上下巻で1000頁を超え、柴田錬三郎賞受賞の山岳小説。森田勝・長谷川恒男等がモデルとなり、ジョン・マロリーがエベレスト初登頂に成功したかどうかの鍵を握る、カメラ(ベストポケット・オートグラフィック・コダック・スペシャルの遺品を求めてネパール・カトマンデドウを中心に展開される山岳痛快小説である。エベレストは中国・ネパールなどで呼び名が異なる。サガルマータ(ネパール)、チョモランマ(中国)。【山岳小説としては楽しめる。お勧めの一品】
孤高の人(上・下巻)
新田次郎
新潮文庫
大正から昭和の初期に掛けて山岳会において単独行の異端児と名を馳せた加藤文太郎をモデルに書いた本です。主人公の加藤文太郎が山に目覚めて、冬山の魅力に取り付かれ、私生活(神戸造船所のエンジン設計技師)の全てを冬山への鍛錬の場と徹底し、30歳を前に自分の信念である単独行から、パーティーを組まざるを得なくなり、厳寒期の槍・北鎌尾根で最後を閉じるまでの山に生涯を奉げた男の物語。【山岳小説第一人者である新田次郎のストリー、展開の巧みさと加藤文太そのものの魅力で読むごとにグイグイ引きこまれていく。第一級の推薦です。是非、皆さんご一読ください】
栄光の岩壁(上・下巻)
新田次郎
新潮文庫
18歳の時、冬季八ケ岳縦走で両足を凍傷で失いながら、山への想いを断ち切れず、訓練に訓練を重ね足のない足に小さな登山靴を着け冬山へ悪戦苦闘しながら挑戦しつずけ、下界の生活に溶け込めず、冬の半年を上高地の雪に埋もれた「徳沢園」の留守番を一人で買ってでて、槍・穂高の氷壁で鍛える。日本人初のアイガー北壁に向かうが、悪天候のため、マッターフォーン北壁挑戦に切り替え、日本人初登頂に成功する。実在人物、芳野満彦(服部満彦)をモデルにした小説。【第一級推薦の山岳小説】
銀嶺の人(上・下巻)
新田次郎
新潮文庫
実在する(した)女性トップクライマー、今井道子(医師)、若山美子(鎌倉彫:彫刻家)をモデルにしたドラマ。二人の出会いは厳冬期の八ヶ岳縦走で単独行の二人が、山頂下の雪に埋まった石室に数日間閉じ込められたところから始まり、全く性格の異なる二人がお互いの登攀技術を認め、ザイルパートナーとして唯一の信頼しあえる関係になり、マッターフォーン北壁の女性パートナーだけで初登頂を成功し、世界的に一躍有名になる。医師、彫刻家としての世界も盛り込みながらストーリーは展開していくえ 。   同書に舞台として登場するモンブラン・グランドジョラス・マッターフォーン・アイガーは、01年にスイスアルプスのトレッキングツアーに参加し、これらの山々を目の前に見た感激が再び蘇ってきました。
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