06年05月1.2.3.4日 燕岳
5月のゴールデンウイークの1日、2日、3日で2年振りに、残雪の北アルプス 燕岳を計画した。
参加者は原田さん、竹内さん、能勢さんと熊本の4名である。

1日:今年一番の暑さになるとのことで、朝から気温は高い、8:00新宿発のスーパーあずさ5号で松本に向かう。
快晴であるが、甲斐駒や八ヶ岳等、雲は全く被っていないが気温の上昇によりモヤで霞んでいる。
松本駅で4人が合流し、大糸線に乗り換え穂高駅11:37に下車、安曇野地方も29度の気温で暑い。
駅隣にある観光案内所で登山届を提出
し、紹介された蕎麦屋「一休庵」で
「トロロそば」「鴨せいろ」「なごり雪
ぶっかけそば」などを各々注文、流石、
信州蕎麦は美味く全員満足。
腹ごしらえの後は、本日の宿、国民宿舎
「有明荘」(1450m)へタクシーを走らす
(\6850-)。
チェックイン(\9500-)後、部屋への入室
が2時とのことで、登山口へ下見に行く。
登山口には中房温泉の登山者用の入浴
施設を建設中であり、この辺には雪は見
えない。
戻って、早速、大露天風呂に浸かり
大広間の休憩室で地ビールを飲む.
濃があって美味い。
TVでは針の木岳の雪崩による遭難の
ニュースが繰り返し流され、一方、明日の
天気予報が芳しくない。
午前中が雨で午後から晴れとのこと。
気がもめ、もう少し様子見とする。
18時夕食は、山中の宿では生ものこそは
ないが、山菜の贅を尽くしたもてなし料理
に舌鼓を打ち、ビールが進む。
食後は部屋に戻りTVで気になる天気予報
を見ながら、ウイスキーで持ち寄ったツマミ
を肴に宴会、寝る前に露天風呂(アルカリ性
温泉)に入り、明日の天気に気をもみながら
全て明日朝の様子で決断と就寝につく
(22時)。
2日:夜中、2時と3時半に物凄い雷で全員、目を覚まされる。朝5時、外は土砂降り。
沢の水が溢れそうなくらいに増水し、まさに激流の如き流れ方である。6時ころ一旦小雨になったが、
再び本降りになり、原田さんは帰ること、他の3名は一日登山を延期を決断する。
原田さんは9:38のバスで帰りの途に着き、残った3名は大広間にある山岳写真集を見ながら、
山のビデオ(槍、穂高、燕、白馬、モンブラン、レスキュー等)を温泉の合間に
8本くらいのストックを全て見尽くしてしまった。一日温泉と山岳ビデオ鑑賞三昧の一日でした。
3日:4時目が覚めると陽は未だ出ていない
が晴れていることは判り安心して布団に
再び、潜り込む。
5時起床し、マイナス3度の外の露天風呂に
飛び込むが、やはり湯温も下がっており
内湯に浸かり暖め直す。
宿のマスターが言うには4台のバス満席で
6時前に入っていったとのこと、我々も朝食
をタップリ取り、身支度をして、着替え等の
不要な物は宿に預け、7:25に有明荘を出発。
舗装道路を約15分中房温泉に向かって
上ると燕岳登山口に着く(7:40)。
車できた登山客が準備を進めている。
細く急な登りは雪解け水が流れ泥濘で
おり、滑らないようにユックリ歩を進める。
10分程で残雪が現れ、日陰では凍って
いる。15分程登るともう額には汗を滲ませ、
ヤッケを脱ぎ快調に登る。
30分で最初の休憩地 第一ベンチに着く
(8:15、1600m)。
二年前の5月ではこの辺りは雪がなかったが、
今年は標識が半分埋まっており積雪量の
多さを知らされる。
ここでアイゼンを装着。
今年は例年に比べ山頂では1.5m程、
積雪量が多いとのことで、全員10本爪
以上のアイゼンと二本ストックを用意した。
アイゼンの爪が硬く締まった残雪にシッカリ
と食い込み歩きやすく安心して登る事が
できる。
更に30分で第二ベンチに到着
(9:00、1800m)。
もう背中も汗が噴出し、Tシャツ一枚
となり早めの水分補給をタップリ取る。
有明山(2268m)の山頂が段々と目の
高さに近づいてきた。
ペースメーカーの熊本を先頭に、竹内、
能勢の隊列を崩さず、黙々と樹林帯の
急な雪道で高度を稼ぐ。
二日前に130人が登り、今日も既に100名
以上が登っており、雪道は硬く締まり、
赤い道しるべが、山荘のスタッフによって
付けられており、ルートを外れる心配が
全くない。
再び約30分で視界の開けた展望台の
第三ベンチに着く(9:40:2000m)。
下には松本市、その先には冠雪した山並みが連なって見え、おそらく中央アルプスであろう。
ここでは標識の頭がヤット雪面スレスレにあり1.5m程の積雪かも知れない。
更に九十九折れの急斜面で高度は益々上がり、前の登山者が列をなし、自然に同じ歩調にならざるを得ない。
幸いなことに、我々の二倍以上大きそうなザックを担いでおり、ユックリなペースは助かる。
斜度は益々きつくなり35分で富士見ベンチと思われる見晴らしの良い場所にでた
(標識がおそらく埋もれてしまったのだろう)(10:30、2200m)。
この辺りでは表銀座縦走コースの燕―大天井間を結ぶ尾根の稜線が大分近くになってきた。
ここまでは約30分の登り間隔でベンチがあり、休憩を取っているので全員快調に登ってきた。
スタートから既に3時間を過ぎたが、急な雪道ではアイゼンと二本ストックの威力が発揮され、
あまり疲れを感じさせない。
富士見ベンチを過ぎ、切り開かれたところ
で稜線をバックに写真を一枚撮る.。
空の青さが目に滲みるようだ。


丁度11時に雪に屋根まで埋もれた
合戦小屋に到着した。
ベンチには鈴なり状態で数十名が休憩
しており、我々も合戦尾根を控えて、
中休止とした(11:00、2350m)。
毎日、燕山荘からスタッフが降りてきて、
水や缶ビール等の出店サービスをしている。
合戦小屋からは東の方が開け、浅間山、
阿四山等が見渡せる。
竹内さんが持ってきたクロワッサンと
アンパンが実に美味い。
タップリ休憩し、いよいよ北アルプス3大
急登と言われる合戦尾根(平均斜度19度)
に取り付く。
先ずは合戦の頭までの急斜面だ。
槍ヶ岳
 ↓

表銀座尾根

喘ぎながら合戦の頭まで登りきると前方に
餓鬼岳、右に燕岳の山頂、餓鬼岳の上方に
双子峰の鹿島槍ケ岳、その左奥に白馬岳が
ハッキリ見える。
能勢さん、竹内さんはこの景観に「最高だ!
感動だ!」とカメラを構えて取り捲る。
合戦尾根の全貌が見渡せ燕山荘まで
一列に蟻が取り付くように登山者が這う。
燕山荘の直ぐ右手は厚さ1m以上もある
雪庇がせり出して今にも崩れ落ちそうだ。
熊本は合戦の頭までの急斜面登りで
右股関節の調子が変だが、能勢、竹内の
両氏は快調そのものである。

10分登っては2分休みを3回ほど繰り返して
2680mの燕山荘に到着した。
(12:45)
早速チェックインし、ザックを下ろして、
アイゼン、登山靴を解きホットする。
談話室でカレー蕎麦と生ビール
(両方で\1500)を注文し、ストーブで暖を
取りながら、雪山の北アルプスを見た感動
に浸り寛ぐ。
1時間ほど休憩し、燕岳山頂走破に向かう。
燕山荘の前は色とりどりのテントの華が
30張ほど咲いている。
北アルプスの全貌は左手から常念岳、
大天井岳、その後ろに西穂、少し離れて、
奥穂、北穂の穂高連峰がそして大キレット
から槍ヶ岳が大きく紺碧の空を突いている。
西鎌尾根の上に三俣蓮華、鷲羽岳、野口五郎岳の後ろに水晶岳、烏帽子岳と続き燕岳の直ぐ左手は雄大な立山が控え、剣岳は燕岳の後ろで見えない。
燕岳の右手は餓鬼岳、その上には白馬岳、鹿島槍ケ岳が見える。更に右は妙高、火打、黒姫山等の新潟の山々が見渡せる。
超展望に圧倒され、更に正面には各種
奇岩のオブジェで囲まれた燕岳(2763m)が
アルプス表銀座の基点として鎮座している。
花崗岩の自然風化(神の造作)によって
出来上がった芸術作品かもしれない。

しばし、北アルプスのパノラマと異様な燕岳
にしばし魅入る。
有明荘に連泊して機を待ったことには
十二分に応えてくれた。
少々風がでてきたが全く気にならない。
カメラに一通り収めてから燕岳山頂に
向かった。
一旦下り、登りに掛かった。
中間点で、熊本はやはり右股関節の痛み
が強く、登頂を断念(既に過去2回登頂を
果たしていることもあって)。
ここで、二人の登頂を待つことにした。
往復約1時間で戻ってきたが山頂から
剣岳、針の木岳等の眺望は素晴らしく
山頂に20分程も滞在したとのことであった。
4時に山小屋に戻り5時の夕食を待つ。一回に100名で今日は3回に分かれるという。
従って少なくとも200名以上が山小屋に泊まり、外のテント組を含めると300名を越す登山客が留まる
ことになる。燕岳の合戦尾根コースは雪崩の心配もなく、ナイフエッジ尾根のような危険な箇所もない
安心して雪山登山できる人気コースの一つであることを自ら登って認識新たにした。
夕食後、日没の景色を見に外にでる。風が強くなってきたが、雲ひとつない天気は終日続き、6時でも
太陽は水晶岳の上でまだ高い。
昨日朝、有明荘の温泉に入りに来た
燕山荘の主、赤沼健至氏がカメラを片手
に景色の写真を撮っており、我々と一緒
に写真に入ってもらった。

中々気さくで180センチを超える長身で
ある。今日はビギナー登山講座で18名
を伴ってきたそうだ。

しかし、唇が荒れたため燕山荘名物の
夕食後のアルペンホルンの演奏はない
とのこと残念であった。
風の中、夕日で雪面が輝き光と影の陰影
が面白い山肌と水晶岳への日没の写真を
撮って引き上げた。
残念ながら今回はコンパクトデジカメの
フルオート撮影では、光のニュアンスなど
とても出せない。

熊本は8時前に寝袋に潜り込む。
竹内さんと能勢さんは少々寝酒をして
就寝につく。
4日:朝3時半に起床する。外は満天の星
が降っている。天気は今日も良さそうだ。
4時は一階の食堂の前には既にストーブが
焚かれており暖かい。我々は5時の朝食に
潜りこむつもりだが、日の出は4:55と朝食
直前で4時半ころから日の出の様子を見に
外にでるが風が強く5分といたら寒くて堪らない。
マイナス12度。様子見に出たり入ったりを
繰り返す。東の日の出方向の山に薄雲が
かかっており、日の出はベールを被った感じ
で鮮やかではなかった。
直ぐ食堂に飛び込み、一番食にありつく。
お陰で、予定通り丁度6時に出発が出来た。
日の出から丁度一時間経ち、太陽は目の
高さにある。
雪道は凍って硬く締まりアイゼンの効きが良く、急な下りも安定して降りられる。
一歩踏み出すごとに、ザクッ、ザクッと音をたて、登山靴を通して足に伝わる感触が実に安心感を
もたらしてくれる。しかし平均斜度19度の急斜面であり、ユックリ慎重に踏み跡をなぞり、合戦小屋
まで30分で降りた。登りに掛かった時間の3分の一であった。
昨日の合戦小屋とは打って変わって誰も
いない。ベンチに座りノンビリ休憩タイム。
今日も前面紺色の空が占める。
急な下りは力が入り体は熱くなっている。
稜線から外れ風も和らいだ。
兎に角、慎重に、休み休み時間を掛けてユックリ降りようと決めたが、何の事はない、山頂に
向かう登山者と頻繁に交差するため、登り優先を実践し待機で自然とユックリ降りることになる。
それでも各ベンチではユックリと休憩しても登山口には9時半には着いてしまった。
しかし標高差1300m弱を3時間半で降り、足は結構パンパンに張り膝関節に来た。
10時少々前に有明荘に戻り、二日間の汗とヨゴレを荒い流し、露天風呂に飛び込んだ。
11時15分に予約したタクシーで穂高駅へ、12:06発の電車で松本に途中下車し、ざる蕎麦で腹ごしらえと
お土産を買い、13:57発あずさ号に乗り16:00八王子16:36新宿着で明るい内に全員帰宅できました。

今回は現地で天候のため、登山を一日延期したため原田さんは登らずに帰宅と残念な結果となってしまい
ましたが、残りの3名はこれ以上望めない程の好天に恵まれ、残雪の北アルプス、風化奇岩の燕岳に感動を
受け有意義なゴールデンウイークとなりました。
お疲れ様でした。

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槍ヶ岳

中岳

南岳

大キレット

奥穂高岳

常念岳

大天井岳

東天井岳

笠ヶ岳

燕岳

野口五郎岳

鷲羽岳

鹿島槍ヶ岳

三俣蓮華岳

餓鬼岳

鹿島槍ヶ岳

白馬岳

燕山荘
燕山荘

燕岳

←登山者の列

合戦小屋を後に10分登ると、左手の
表銀座の稜線に槍ヶ岳の先端、槍穂が
飛び出してきて、最初の感動がきた。
一歩一歩(約50センチの高さ)歩を
上げるごとに槍は大きくなり、その右手
稜線に燕山荘が小さく見えた。